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記事タイトル:恐怖!NGの効かないびっくり客~元風俗嬢の体験した怖い話~

ライター:   閲覧数:13772

2019-01-02 08:02:00

【はじまり】

当時私は19歳。すでにちょっとしたアダルトなお仕事経験を経て、とあるデリヘル店への勤務が決まりました。肌寒い冬の日の初出勤、待機室で出番を待っていると…

「儚さん!ご新規90分ネット指来ました!」

ネット指とはインターネット指名の略。お店のHPを見て指名することを言います。接客グッズの詰まったバッグを抱えてドライバーの待つ車へ乗りこみ、私はホテルへと向かったのでした。15分後、ドライバーが車を停めたのはビジネスホテルの前。

「初接客、きったねぇラブホとかじゃなくて良かったっすね!」

軽い感じで話しかけてくるドライバーと共にホテルへ入り、指定された部屋へと向かいます。当時在籍していたそのお店は、送迎だけではなく前払いの料金をお客様から受け取るまでがドライバーの仕事でした。
部屋のベルを鳴らし、細く開いたドアの隙間から会計を済ませます。お客様の姿をわずかな隙間から確認できることはほぼ無く、その後ドライバーの陰から身体をすべり込ませ素早く入室、部屋の中でご対面という感じでした。
この時もそう。部屋の中で初対面を果たしたお客様は、一見ごく普通の、中年男性でした。

【初めてのお客様なんです…】

これは私が彼と対面した直後に発したセリフ。大概の風俗店では、新人キャストは一定期間、新人であることが分かるようにHPに記載されます。(注:そのお店での、新人ですよ…)新しいもの好きな人や「俺がいろいろ教えてやるよ」な人はどこの世界にも一定数おりあえて新人を選ぶお客様は割と多く、それっぽいウブな接客、セリフは好まれます。今となってはその後の風俗人生「初めて」を何百回使ったのか、何度「新人」として紹介されたのか思い出せませんが、あるあるですかね(笑)。
まぁそれはさておき、彼はその言葉に相当喜び、言いました。

「実は僕も初めてなんだよ!こういうの!なんか、運命感じる」

今考えると真顔で言われた最後の一言、こちらは恐怖を感じます。しかし当時の私はそんなことはみじんも考えず、とにかくリピートしてもらおうと全力で接客し、彼は楽しく時間を過ごしてくれたようでした。

【異変】

その頃の私は基本、1日4時間単位で出勤予定を組んでいました。翌出勤日、シフト通りに待機室へ入ると、即ドライバーがやってきて言いました。

「儚さん、240分本指入ってます」

本指とは本指名、リピーターによる指名のことですがそれを喜ぶ以前に、え…なに?240分って何時間?4時間?てことは1人の人間にフル接客?
2回目の出勤でまさかの事態に混乱する私。皆さまお察しかもしれませんがその予約を入れたのは、「初めての彼」でした。
前回とは異なるホテルへ呼ばれ、2度目の接客。最初の30分であっさりプレイは終わり、残り時間はTVを見たりしゃべったりするだけでした。本当にこれでいいのかと気を使いすぎて抜け殻のようになった私が翌日出勤した直後、ドライバーの一言。

「儚さん、240分…」

【NGという手段】

結局、その後半月は出勤のたびに全く同じ展開で、私は彼のもとへ貸し切りで通い続けることになります。回を重ねるたび、私は彼への違和感を募らせていきました。プレイをせずにただ部屋でご飯を食べて映画をみるだけというのはもはやデフォルト、無言で時間いっぱい見つめるだけ、なんて日もザラ。と思うと突然泣いたり爆笑したり4時間の中での彼の情緒落差はタワーオブテラーのごとし。しかし当時の私はその恐怖をスタッフの誰にも相談できずにいたのです。するとある日のこと。私のもとへ店長が来て言いました。

「儚さん、NGってできるからね。接客したくない客はブロックできるから。嫌なことがあったらすぐ言って。」

利用客の電話番号は店のPCに登録され、名前や利用履歴が受電の時点ですぐにわかります。キャストがNGを出した場合、その利用客から電話があったときにスタッフがあれこれ理由をつけて、そのキャストへの指名をブロックしてくれるというシステムがあったのです。私は速攻で彼をNGにし、その日も当然のごとく入っていた貸し切りの予約は体調不良という理由でキャンセルにしてもらったのでした。

【終わらない恐怖】

それから数週間、私は晴れ晴れした気持ちで仕事をこなしていきました。接客にも慣れてきたある日のこと。新規の90分ネット指が入っており、いつも通りお金の受け取りを終えたドライバーの陰から部屋へスルリと入り込むと、そこには顔の大部分が隠れる大きなマスクをした人が立っていました。

「会いたかったよ」

マスクを外したその客は、「彼」。部屋から逃げ出す勇気もなく、なんとか恐怖の90分を乗り切りました。店に戻り店長にそのことを報告したのですが、NGをどう回避したのかとみんなで首をかしげていました。

翌日。出勤早々に新規ネット指名が入りホテルへ。入室してそこに立っていたのは、帽子を目深にかぶった…彼でした。

【そして逃走】

スタッフが警戒する中、2度もNGをすり抜けるなんてただ事ではありません。恐怖におののきつつ、私はとぼけたふりをして明るく切り出しました。

「○○さん、本指名にしてくれたらいいのに何でまたネット指名なの~」
「不思議なんだよね。本指名しようとすると毎回儚は予約でいっぱいって言われるのに新規で電話すると予約とれるんだ。新規だと、ほら、本指名できないしマックスでも90分しかとれないし(そのお店のシステムでした)。でも短い時間でも会いたいからさ」
「え、でもお店に電話番号登録してるでしょ?新規登録なんて何度もできないよね?」
「…絶対、お店の人に言わないでね、僕にはできちゃうんだ」

そういうと彼はソファの足元から大きなバッグを取り出し、逆さまにしたのです。

じゃらじゃらじゃらっ

音を立ててそこに散らばったのは、20台を超えるであろうケータイ電話。

「ほら、借金関係でね、電話番号たくさんあるから。」

NG回避の謎が解けると同時に凍りつきました。2~3台ならまだしもそんな台数のケータイを一人で所持している時点で怖いのに、さらっと「借金関係」って言ったぞこの人。デリヘル呼んでる場合じゃないだろ…。思うことは多々ありましたが、半ば無理やりプレイに持ち込み話題をそらし、ひたすら時間が過ぎるのを待ちました。プロ根性。
そして長い長い90分が過ぎ退室の直前、彼は座った眼でこう言いました。
「儚、一緒に逃げてくれ」
「考えとく!!」

くい気味に心にもない返事を残し、わたしは部屋から飛び出して一人で逃げ、下で待機する送迎車に飛び乗りホテルを後にしたのでした…。

【おわりに】

この一件からひと月ほど休暇をもらった私でしたが、店長から「もう大丈夫だから出勤しておいでよ」と言われ復帰し、その後彼と会うことは二度とありませんでした。今考えると、店長がなぜもう大丈夫と判断できたのか、そして本当にその後何事もなかったことを想像するとまた怖い話かもしれませんが(笑)。
以上、わたしの風俗業界においての最初の恐怖体験談でした。
初対面で「運命」という言葉を使うお客様の恐怖は数年後再度私に降りかかるのですが、それは別の機会に。キャストの方もお客様も、このワードには少し気を付けたほうが良いかもしれません。では、また。

ライタープロフィール

儚

元風俗嬢

幼い頃から今に至るまで「事実は小説より奇なり」の変態ホイホイ人間。おかげさまで普通の感覚を超越し、好奇心からデリヘル、箱ヘル、ソープランドから高級クラブ、その他諸々経験済。現在自…

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