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「地雷」嬢 今昔物語 ~昔からすごい地雷嬢がいた!~ (下)

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2021-11-24 17:57:35

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この(下)では、時代を江戸時代~明治・大正にまで遡り、落語に登場する地雷嬢を紹介します。

なお、ここでは「現代の風俗嬢 = 昔の遊女」と捉えるわけではありません。

現代と当時とでは、社会の成り立ちや、性風俗産業の在り方が大きく異なりますので、安易な同一視は慎むべきです。
しかし、客から対価を取って性的サービスを提供するという点では両者に共通点もあり、そこで繰り広げられる人間模様には、現代の私たちから見ても理解や共感ができる部分も少なくありません。

また、落語はあくまで創作・虚構ですので、そこに描かれている事が実際に存在したのかは定かではありませんが、全くの絵空事とも思えません。

さて、落語には吉原などの遊郭での出来事を取り上げたものも多く、廓噺(くるわばなし)と呼ばれます。その中から3つの噺を取り上げ、地雷嬢の様子を見ていきます。

■「五人廻し」 ・・・・空しく待つ身の辛さ

この噺の時代背景は、明治から大正にかけてのようです。

吉原に黄瀬川(きせがわ)という花魁(おいらん、上級の遊女)がいました。
吉原には、一人の遊女の所に複数の客が同時に遊びに来ると、いっぺんに相手をする「廻し」というやり方がありました。個々の客が個室で待っていて、遊女が順に回って来て相手をするのです。

黄瀬川は、5人の客を各部屋に待たせています。5人は、職人、役人、田舎(いなか)者、通ぶったキザ男、黄瀬川と馴染みだと思い込んでいる田舎の金持ちといった面々です。

※「田舎者」という表現は余り気持ちの良いものではありませんが、落語にはよく出てくる人物像なので、ご容赦ください。かく申す私も、「田舎」におります。

黄瀬川を待つ客たちは、しびれを切らして、文句を言ったり、不貞寝したり、通りかかった「若い衆」(店のスタッフ)を捕まえて、怒鳴り散らし、黄瀬川が来ないのなら代金を返せと息巻きます。
この客たちの言動が堪らなく滑稽で面白いのですが、ここで再現することは不可能です。テレビなどで演じられていたら、是非ご覧ください。

困った若い衆は、金持ちの部屋で黄瀬川を発見し、他の客の部屋にも行くように頼みます。
すると黄瀬川は金持ちに、あなたの所に居続けたいので、他の4人に返す代金を出してほしいと頼みます。黄瀬川に惚れられていると信じ込んでいる金持ちは承諾して、4人分の代金相当のカネを出そうとします。
ところが黄瀬川は、なぜか5人分の代金が欲しいと言います。金持ちは、いぶかしく思いつつも、5人分の代金を黄瀬川に渡します。

すると黄瀬川は、1人分を金持ちに返して言います。

これを持って、お前さんも4人と一緒に帰っておくれ

とんだ地雷嬢がいたものです。

■「お見立て」 ・・・・徹底的にコケにされる客

この噺の登場人物は、田舎の金持ち・杢兵衛(もくべえ)、花魁・黄瀬川、遊郭の若い衆・喜助の3人です。
杢兵衛は、実は黄瀬川に嫌われているのですが、惚れられていると信じて疑わず、黄瀬川に通い詰めます。

ある日杢兵衛が店に来ます。
しかし、そのしつこさに嫌気がさした黄瀬川は会おうとはせず、喜助に「黄瀬川花魁は、しばらく来なかった杢兵衛に恋焦がれて病気になり、ここにはおりません」と言わせます。
ところが、杢兵衛はその言葉を真に受けて、黄瀬川がいる病院に見舞いに行くと言い出します。

困った喜助は、杢兵衛を待たせて、黄瀬川に指示を仰ぎに行きます。
黄瀬川は、

いっそ死んじまったことにしな

と言います。
喜助が杢兵衛に伝えると、杢兵衛は「墓はどこにあるか?」と尋ねます。
焦った喜助がとっさに、吉原からあまり遠くない墓地を挙げると、杢兵衛はこれから墓参りに行くと言い出します。

喜助は再び、黄瀬川に指示を仰ぎます。
黄瀬川は、遠方の墓地にしなかった喜助を叱りつつ、杢兵衛を墓参りに連れて行くように命じます。
適当な墓に連れて行き、黄瀬川の墓だと騙してお参りさせるよう、悪知恵を授けます。

喜助は杢兵衛を、あちこち連れまわした挙句、黄瀬川とは何の関係もない寺の墓地に案内します。
そして、大量の生花と線香を買い込み、とある墓に花を供えて墓碑銘を覆い隠し、盛大に線香を焚きます。

一心に拝んでいた杢兵衛が、ふと花をかき分けて墓碑銘を見ると・・・
「福院暗蒙養空信士 文久二年戌年 享年九十三歳」
とあり、ウソがばれてしまいます。

墓を間違えたことにして、慌てて別の墓に花を供えますが、今度は「喜遊童子」とあって子供の墓です。
その次の墓には、「陸軍歩兵上等兵 大村新八郎之墓」とあり、また杢兵衛に怒鳴られます。

杢兵衛「いったい、黄瀬川の墓はどれだ?」
喜助

ずらりと墓が並んでいますから、どうぞお見立て願います

■「品川心中」 ・・・・地雷嬢ナンバーワン

私が知る範囲では、 この噺の花魁ほどの地雷嬢は他に見当たりません

品川の遊郭に、お染という花魁がいました。
一時は店のナンバーワンでしたが、歳には勝てず、今では「お茶をひく」状態です。

遊郭には「紋日」(もんび)と言われる習慣がありました。
季節の変わり目に衣替えをする際に、同僚の遊女、芸者、幇間(たいこもち)などを自分の座敷に呼び、大いに飲み食いさせ、祝儀を配って衣替えのお披露目をするのです。
当然、多額の費用が必要でした。

今のお染には、到底そのようなカネは工面できません。お染は、いっそのこと死んでしまおうと考えます。
しかし、普通に自殺したのでは、死後、あの女は紋日ができない事を苦にして死んだと噂されるだろう。それは悔しい。

ならば誰かと心中すれば格好がつくだろうなどと、とんでもないことを考えます。

顧客リストをめくって、 適当な心中相手を探します

色々検討した結果、貸本屋の金蔵に狙いを定めます。少しボンヤリしたところがピッタリです。

金蔵への思いを切々と書いた(もちろんウソ)手紙を、金蔵に送ります。
ノコノコとやってきた金蔵に、お染は心中話を持ち掛けます。
すると金蔵は、あっさりと承諾し、明日の夜に心中する約束をします。

翌日、金蔵は家財道具を売り払い、旅に出ると称して方々へ暇乞いをし、日が暮れてからお染の元を訪ねます。どうせ死ぬのだからと、二人で腹いっぱい飲み食いします。

深夜、いよいよ心中決行です。裏の海に二人で飛び込むことにしました。
ところが、いざ飛び込む段になると、金蔵がためらっています。
お染は、「一足先に行っとくれ」と言って、金蔵の背中を押して海に突き落とします。

続いてお染も飛び込もうとした時です。
お染の様子にただならぬ気配を感じていた若い衆が走って来て、お染を制止して言います。かねてお染がカネの無心をしていた旦那が、金を出してくれることになったのです。

それを聞いた途端、 お染は飛び込むのを止め、金蔵を放置したまま廓に戻ってしまいます

ひどい遊女がいたものです。金蔵はどうなったのでしょうか。

この噺はここで終わりにする事が多いのですが、実は続きがあります。
興味がある方は、落語を聴いてみてください。

※この記事を書くに際し、次の本を参考にしました。
◇古今亭志ん生『志ん生廓ばなし』(立風書房)
◇矢野誠一『落語手帳』(講談社)

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